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ESG Investment and Sustainable Management

〜資本市場・企業経営の正義とは何か〜

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〜資本市場・企業経営の正義とは何か〜

ESG投資とサステナブル経営

  • 前提科目(推奨):経営分析

  • 関連科目:ファイナンス論

  • 担当教員:保田隆明 総合政策学部 教授
         福田智美 総合政策学部 講師(非常勤)

  • 単位数:2

  • 受講対象:慶應義塾大学大学院政策メディア研究科 1-2年生および総合政策学部・環境情報学部1-4年生 

  • 開講学期:2023年度 秋学期 

  • 開講時間:月曜日5限(16:30-18:00)

  • 場所:慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスシータ館(θ館)

講義概要

​講義概要

Lecture Outline

本講義では、ESG投資をESG経営に関連するアカデミックリサーチの現況を受講生らに示したのち、主に、①企業に資金提供をする投資家視点でのESG(ESG投資)と、②企業経営を通じてESGの実現を図ろうと知る企業視点でのESG(ESG経営)の二つの側面からアプローチしていく。後者については、近年我が国でも議論が高まっている人的資本経営についてもカバーする。

  • ESGの社会的背景についてのグローバルな動きの把握

  • ESG投資の中身と実態についての理解の深掘り

  • ESG投資の課題や限界

  • ESG投資の代替として一部で期待されているインパクト投資

  • 企業経営者はどのようにESGに対峙しているのか、ESG課題を企業経営を通じてどのように実現しようとしているのか

  • 真のESG的な取り組みと、見せかけ行為(グリーンウォッシング)の違い

  • ESGを起点とした新規事業への取り組み

  • ESGとあるべき人的資本経営の姿

学部、大学院共通科目であるが、課題に関して学部生には広く知見を広めてもらうことを主眼に置く一方、大学院生には担当教員から関連する学術研究を広く紹介しつつ、週次課題では関連する学術研究のさらなるリサーチおよび要約を提出してもらうことで、本分野に関しての学術的な知見を深めてもらうことに主眼を置く。

担当教授紹介

​担当講師紹介

Faculty Member

本講義は投資銀行、起業、ベンチャーキャピタルの業務経験後にアカデミックでコーポレートファイナンスやESGについての研究・教育活動を行っている総合政策学部教授の保田隆明と、資産運用会社にて機関投資家という立場にて現役で株式アナリスト兼ESGアナリストを行っている福田智美が、アカデミック・実務双方の最新の動きを網羅した上で、各界の最前線で勤務するプロフェッショナルをゲスト講師に招き、資本市場および企業経営における正義とは何かを受講生の皆さんに考えてもらう機会を提供する。

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慶應義塾大学 総合政策学部 教授

​ほうだ たかあき

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慶應義塾大学 政策・メディア研究科 講師(非常勤)
ラザード・ジャパン・アセット・マネージメント 
シニア・ヴァイス・プレジデント、シニア・リサーチ・アナリスト

保田 隆明

​ふくた ともみ

福田 智美

リーマンブラザーズ証券、UBS証券勤務後にSNS運営会社を起業。同社売却後、 ベンチャーキャピタル、金融庁金融研究センター、神戸大学大学院経営学研究 科教授等を経て、2022年4月から現職。2019年8月より2021年3月までスタンフ ォード大学客員研究員としてアメリカシリコンバレーに滞在し、ESGを通じた 企業変革について研究。上場企業の社外取締役、監査役も兼任。

【主な著書】

『ESG財務戦略』

『コーポレートファイナンス 戦略と実践』

関連共著論文に「非財務情報とESGスコアの関係性―トピックモデルによる実証分析」等。

三菱証券、みずほコーポレート銀行勤務後にラザード・ジャパン・アセット・マネージメントに入社。ラザードでは運用部に所属し株式運用のシニア・リサーチ・アナリストを務める。
長期的視点から投資を行う機関投資家として年間数多くの日本企業とエンゲージメント対話を行い、財務と非財務(ESG)の両視点から企業を調査、分析し、日本企業の企業価値向上を目指している。
日経統合報告書アワード審査委員。
お茶の水女子大学ジェンダードイノベーション研究所研究協力員
【専門分野】
ダイバーシティ経営・ESG経営・企業の情報開示・金融経済学
【主な著書】
『実践・人的資本経営』第4章執筆

​講義スタイル

Teaching Style

 株式投資家、銀行(債権者)、経営者、従業員、そして顧客と、企業経営には数多くのステークホルダーが関与するが、それぞれのステークホルダーの利害は必ずしも一致しない。
 時間軸、コミットメント、他の選択肢など、各ステークホルダーが異なる思考と嗜好を有する中で、企業経営者は株主利益を最大化しつつ、全てのステークホルダーの便益をも最大化する経営戦略を遂行していく必要がある。絶対唯一の答えは存在しない。
 刻一刻と変わる資本市場と企業経営の状況において、なにが正義なのか、それを受講生とともに考えたい。講義はあくまで受講生の皆さんの思考のきっかけであり、各講義で問われる、あなたならどうするか?何を正義と思うのか?という命題に対して積極的に発言することが求められる。毎回の白熱した講義を講師陣一同と受講生と一緒に作り上げましょう!

レクチャーホール席
プログラム

Schedule and Teachers

スケジュールと担当講師

​敬称略

第1回 

なぜ今ESGなのか:日本企業にとってのESGの位置付け

担当:保田隆明、福田智美

 ESGを取り巻く社会的背景について、グローバルな動きも含めて理解をする。企業活動による外部経済および外部不経済、企業活動のグローバル化に伴って発生する発展途上国で人権問題など、ESGが波及する範囲について思いを巡らし、今後の講義の礎とする。
 また、その前提として、現在の日本企業の置かれている状況を把握する。低収益性、低成長性という日本企業が抱える課題に対して、ESGはどのようなチャンスを提供しうるのか、そして、どのようにすれば日本企業はESGを事業化することができるのかを見ていく。

第4回 

ESGが日本企業のM&A活動に与える影響

第2回 

企業価値評価と非財務情報について

担当:保田隆明、福田智美

 企業価値や株式価値がどのように算出されるのかについての簡単な概要に触れ、その上で、非財務情報について、その中身を紹介しESGとの関係性について理解していく。また、CSRとの違いも議論しながら、ESGに取り組む意義についての理解を深める。
 主にESG投資とESG経営の観点から、学術研究で明らかにされていることと、今後研究が待たれる分野について触れる。特に、ESGが企業の業績や株価に与える影響について、人的資本経営の視点もカバーしながら網羅していく。それにより、ESGを卒業プロジェクトや修士論文の題材として考えている学生にとってのレビューを提供する。

第5回

機関投資家によるESG投資の

概要:機関投資家の視点から①

第3回

コーポレートガバナンス概要

ゲスト講師:Swiss Asia Financial Services Chief Investment Officer門田泰人

 ESGにおけるG(ガバナンス)関して、コーポレートガバナンスについての基礎知識の定着を図る。コーポレートガバナンスとは何か、なぜ重要なのか、企業における実情はどのようになっているのかについて、近年話題になることも多いアクティビストファンドの視点も織り交ぜながら理解を深める。長年続いてきた日本的経営の抱える課題についても浮き彫りになろう。

第6回 

ESG投資について 

ゲスト講師:バークレイズ証券 取締役副会長兼投資銀行部門長 矢野雄彦・M&Aアドバイザリー部長 大塚雄三

ゲスト講師:アドバンテッジパートナーズ パートナー兼CAO、IR・ESG・オペレーション統括 馬場勝也

担当:保田隆明、福田智美

 ESGの中でもGの側面から、企業のM&A(買収・合併)の活動がどうあるべきかという議論も活発化している。M&Aにおけるアクティビストとの攻防、買収防衛策の実務も近年様々な展開を見せており、事例を踏まえつつ今後の方向性と課題について講義する。

 機関投資家による株式投資戦略の概要を説明したのち、機関投資家が採用するESG投資手法のうち、主なものを紹介し、そのメリットと限界、そして機関投資家がESG投資に傾倒することによる企業への影響についてカバーしていく。石油、アルコール、タバコ、ギャンブル、防衛産業などのいわゆるSin Stockには投資すべきではないのか、消費者としてそれらSin Stock企業とどのように関わるべきなのか、一筋縄ではいかない論点を議論する。また、未上場企業の株式への投資を主に行うプライベートエクイティファンドの投資を通じて、投資時の検討過程において、また、投資後の経営変革を通じたESG実現に関して講義する。

 これまでのゲスト講師の講義内容の中間総括。学生の理解度を高める。

第7回 

ESG投資について 

機関投資家の視点から②

ゲスト講師:上場株投資・エンゲージメントファンドのElliott Management 日本代表 Aaron Tai

 ESG投資を行なっている機関投資家の方をゲスト講師としてお招きし、実務の現場でどのようにESG投資を行なっているのか、そして今後の可能性と課題について講義する。

第10回 

ESG投資における投資家と企業経営者のエンゲージメントまとめ

担当:保田隆明、福田智美

 これまでの機関投資家のESG投資の取り組み、企業経営者の対応と両社のエンゲージメントに関する講義を踏まえて、改めてその中身および課題について整理する。これにより、エンゲージメントの意義・課題の理解を深めると共に、投資家・企業経営者双方の視点から、両社にとってのより良いあり方について考えを深める。

第13回 

ESG経営について:

企業経営の視点②

ゲスト講師:三菱商事 執行役員CSEO(チーフ・ステークホルダー・エンゲージメント・オフィサー) 小林健司

 ESGにおけるE(環境)とS(社会)の視点から、日本の規制当局がどのような方針を進めようとしているのか、それに対応して企業側ではどのような動きがあるのかについて理解する。これらの最近の動きを把握し、今後の企業経営におけるサステナビリティのあり方について議論を深める。

第8回 

ESG経営について:

企業経営の視点①

ゲスト講師:日立製作所 代表執行役 執行役副社長, CFO 兼 CRMO 

河村芳彦

 ESGを推進する企業経営者によるゲスト講義を通じて、ESGを起点としたビジネスチャンス、そして事業ポートフォリオ再構築の可能性について理解を深めると同時に、人的資本経営について学習する。また、これまでの投資家サイドの講義との対比を行うことで、ESGをめぐる投資家と企業の立場、スタンス、考え方の違いを理解し、最適なコミュニケーションのあり方についても触れる。

第11回

サステナビリティと気候変動リスク、サプライチェーンの人権問題

ゲスト講師:KPMG/あずさ監査法人 サステナブルバリュー統轄事業部 マネージング・ディレクター 土屋 大輔

 ESGにおけるE(環境)とS(社会)を中心に、なぜ企業にとってサステナビリティが重要なのか、気候変動リスク、サプライチェーンにおける人権問題などはどの程度深刻で、企業はどの程度それに対応していく必要があるのかついて理解をする。また、合わせてEとSに起因する財務的視点での考察についても学ぶ。

第14回 

ESGと企業経営まとめ

担当:保田隆明、福田智美

 これまでの講義全体を通じたESGの取り組み方、課題、可能性などについてのまとめ。受講生の課題意識、問題意識を明確化し、受講生が今後研究会や卒業プロジェクトなどで深く探究したいテーマについての洗い出しを行えるように指導する。

第9回 

ESG投資におけるエンゲージメントの可能性と課題

ゲスト講師:グラスルイス ジャパンリサーチヘッド 上野直子

 これまでの機関投資家と企業経営者の講義を理解した上で、株主総会で重要な役割を担う議決権行使について、近年のESG関連の議案の中身を元に、機関投資家に議決権行使を助言する議決権行使会社の方をゲスト講師にお招きし、その方針と中身および課題について講義する。これにより、ESG投資手法の一つであるエンゲージメントの可能性と課題に接近する。

第12回 

人的資本経営

担当:保田隆明、福田智美

 ESGにおけるS(社会)の主要構成要素である人的資本について、なぜ今人的資本経営が求められているのか、人的資本経営を実践することで企業における組織づくりや従業員のモチベーションやエンゲージメントはどのような影響を受けるのか、そしてそれらはひいては企業の業績や株価にはどのようなインパクトを与えるのか、について議論を深めていく。

第15回

​最終発表

担当:保田隆明、福田智美

 最終レポート発表(個人ワーク)。詳細は講義の際にアナウンスするが、学部生は企業を1社選択し(国内外問わない)、同社のESG戦略に対しての取り組みの評価とそれに関しての株式市場からの評価に関してレポートに取りまとめてもらう。大学院生はそれに加えて、関連する学術研究を取りまとめ、自身が本分野で学術研究を実施する場合の研究計画書を作成してもらう。

発芽植物

本寄付講座開設背景

 国連がESG(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)を軸とした責任投資原則を定めて以降、企業は利潤の追求のみならず、人にも社会にも優しいサステナブルな社会実現に向けて、目に見える形で貢献をすることが求められるようになってきている。一方、企業はその仕組み上、株主利益最大化という至上命題を抱えており、ESGの台頭によって、企業は利益と社会効用の二つの最大化を同時に実現せねばならないという課題に直面している。企業はどのように、そしてどの程度ESGに取り組むべきか、またそれを株式市場はどのように評価するかに関しては、未知の点が多く、学術研究の蓄積も途上である。
 そこで本講義では、学生らに現時点における学術研究によって明らかになったことを共有することと、実務現場でESG投資やESG経営に取り組む実務者の講義を提供することで、ESGを取り巻く企業経営、社会運営に関しての導入的な知見を提供し、それら領域に関しての学習を深めていきたい学生に幅広い学習の機会を提供する。またESGを対象とする学術研究は、その蓄積が待たれている分野であるため、大学院生には学術研究推進の機会を提供することで、当分野の研究蓄積の一助ともしたい。

 本寄附講座はGlobal ESG Strategyのスポンサーシップを受けている。なお、本ウェブサイトはSFCの学生以外のステークホルダー(他学部生や聴講を希望する社会人など)に対して講座内容の概要を伝えるための存在であり、受講生にとってはシラバスおよびSOLで展開する講師からのコミュニケーション内容が優先する。

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